ポチっとが、あなたを理解するしくみ
少ない言葉でも、
伝わる相棒へ。
「いつもの感じでお願い」
そのひとことが伝わる関係を、
文脈から育てていく。
「いつもの感じでお願い」
「あれ、どうなった?」
「今日は、もう少し静かなところがいいな」
親しい相手には、長く説明しなくても伝わることがあります。
それは、言葉の意味だけでなく、これまで一緒に経験したことや、その人の好み、今置かれている状況を知っているから。
ポチっとが向き合っているのは、この「文脈」を育てることです。
このページでは、研究を手がかりにした設計思想と、これから検証・開発していく内容をご紹介します。掲載した仕組みすべての実装や、効果の実証が完了していることを示すものではありません。
言葉の向こうにある、
文脈を理解する。
同じ「どこでもいいよ」でも、その意味はいつも同じとは限りません。
本当におまかせしたい日もあれば、疲れていて選ぶ余裕がない日もある。相手の希望を優先したいときもあります。
言葉を理解するには、「何と言ったか」に加えて、「どんな状況で、何を大切にしているか」を捉える必要があります。
ポチっとでは、今のお願い、直前のやりとり、これまで教えてもらったことを組み合わせ、その場に合う理解につなげることを目指しています。
わからないときは、決めつけずに聞く。その確認も、文脈を一緒につくる大切なやりとりです。
履歴を残す。
その先に、理解を育てる。
「あのお店、ちょっとうるさかったね」
このひとことだけで、「にぎやかなお店が嫌いな人」と決めてしまうのは、早すぎます。その日は大事な話があったのかもしれません。
まずは、何があったのかを、そのときの状況と一緒に覚える。その後の会話や確認を通じて、たとえば、こんな理解に育っていく。
家族と食事をするときは、
落ち着いて会話できる場所を好む。
私たちが目指すのは、出来事を保存するだけでなく、いつ、どんな場面で役立つ記憶なのかを整理することです。
一度つくった理解も、変わっていきます。「今日はにぎやかなところがいい」という希望があれば、今の言葉を大切にします。
ひとことを、決めつけにしない。
会話と確認を重ねて、理解を育てる例
- 会話
「あのお店、ちょっとうるさかったね」
- 出来事と状況
家族との食事。
落ち着いて話したかった。 - まだ、理解の候補
家族との食事では、
静かさが大切? - 本人に確認
「家族で行くときは、
静かなお店がいい?」
家族との食事は、
落ち着いて話せる場所。
次のお店探しに生かす。
今回の希望も、忘れずに確認。
いつもの好みとは、
決めつけない。
訂正を受け取り、
理解の候補を見直す。
今、覚えておくこと。
必要なときに、思い出すこと。
人の記憶を考えると、今している会話を追うことと、昔の出来事を思い出すことでは、役割が違います。
この違いを手がかりに、ポチっとの記憶も、役割に応じて扱う設計を考えています。
- 今のやりとりを支える記憶
- 何を相談していて、どこまで決まり、何がまだ決まっていないか。「さっきの二つ目で」と言われたときに、同じ話を続けるための記憶です。
- 経験を思い出すための記憶
- 以前行った場所や、そのときの感想。関連するお願いや出来事がきっかけになったときに、必要な経験を取り出します。
- 好みや考え方を支える記憶
- 何を心地よく感じるか、何を優先して選ぶか。繰り返し教えてもらったことや、本人に確認できたことを、条件や例外と一緒に整理します。
新しい記憶が、いつも最優先になるわけではありません。ずっと大切にしていることもあれば、その日だけの希望もある。記憶の新しさと、今のお願いとの関係を、両方見ることが必要です。
記憶は、使うときに
文脈になる。
覚えていることを、毎回すべて使う必要はありません。
お店を探すときと、予定を調整するときでは、必要な情報が違います。仕事の日と休日、一人のときと家族といるときでも、同じ好みの重みは変わります。
ポチっとでは、そのときのお願いに合わせて、関係する記憶を選び、今使うための文脈を組み立てることを目指しています。
今のお手伝いに、必要な記憶を。
記憶を選び、今回の文脈を組み立てる例
「今夜、家族で食事したい」
今探している地域・人数
以前のお店での感想
家族との食事は静かな場所
今回に関係する記憶を選ぶ

地域・人数・静かさ・今回の希望
提案する / 足りないことを聞く
↺ 結果や訂正を受け取り、必要に応じて記憶を更新
たとえば、お店探しの途中で、翌朝の予定と移動の負担がつながることもあります。
「明日は朝が早いと言っていたから、
今夜は近くのお店にする?」
別々に話していたことが結びつき、役立つ提案になる。ただし、それはあくまで提案です。推測を、本人の希望として扱わないことを大切にします。
覚えたことと、
推測したことを分ける。
「あなたが話したこと」
「ポチっとがそこから考えたこと」
「あなたに確認できたこと」
この三つは、それぞれ違います。
記憶を整理するときには、内容だけでなく、いつ、どの会話から得た情報なのか、どんな場面に当てはまるのか、本人に確認できているのか、といった手がかりも大切になります。
理解の根拠をたどれること。間違っていたら直せること。古くなった理解を更新できること。
そして、「それは忘れて」と言われた情報が、その後の理解に残り続けないこと。
覚える仕組みと同じくらい、直す仕組み、忘れる仕組みも重視していきます。
使う端末が変わっても、
理解はつながる。
スマートフォンで教えた好みを、別の場所でまた一から説明する。そんな手間を減らしたいと考えています。
将来、車やロボット、腕時計、メガネなどにポチっとが広がっても、あなたとの積み重ねを引き継げるように。
そのために、あなたについての記憶を、特定の端末やAIモデルだけに閉じ込めず、必要な場面で活用できる構造を目指します。
同時に、すべての機器に、すべての記憶を渡す必要はありません。その役割に必要な情報を、あなたが認めた範囲で使う。あなたを知っていることと、あなたに代わって操作する権限を持つことも、分けて考えます。
場所が変わっても、同じ相棒。
あなたへの理解を、必要な場面につなぐ構想
あなたとの会話・経験・訂正

好み・経験・考え方についての記憶
本人の許可と、機器の役割に応じて
必要な情報を選ぶ
スマートフォン
日々の相談や予定
車
移動に合うお手伝い
ロボット・家の機器
暮らしに合うお手伝い
時計・メガネ
その場に合うお手伝い
点線の接続先は将来の構想です。現在、これらの機器との連携を提供しているわけではありません。
「わかってくれる」を、
検証できるものに。
この設計には、記憶や会話に関する研究から得られる手がかりがあります。
人は共有した経験をもとに、少ない言葉でやりとりできるようになること。記憶の思い出しやすさには、新しさや繰り返しが関係すること。そしてAIも、長い履歴を渡すだけで必要な情報を適切に使えるとは限らないこと。
私たちは、こうした知見を設計の出発点にします。人の脳をそのまま再現した、と主張するものではありません。
確かめたいのは、実際のお手伝いがよくなるかどうかです。
- 言い方が変わっても、同じ希望を理解できるか。
- 好みが変わったとき、古い理解を更新できるか。
- 関係のない記憶を持ち込まずに済むか。
- 情報が足りないとき、適切に確認できるか。
- 正確さを保ちながら、説明し直す負担を減らせるか。
少ない言葉でも、正しく伝わる。違っていたら、直せる。
そんな相棒を、対話と検証の積み重ねで育てていきます。